渡航前面談レポート#7:花形槙

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CG-ARTS(公益財団法人画像情報教育振興協会)

アーティストの花形槙さんは、ニューヨークで自身の身体感覚を揺さぶるパフォーマンスの展開を予定しています。渡航前に開かれたアドバイザーとの面談では、ニューヨークの人々に向けて予定している「問診」やそのパフォーマンスの実施場所、現地の学生との連携による記録手法などについて具体的なアドバイスが送られました。滞在中のパフォーマンスの展望について語られた面談の概要をまとめます。

面談実施日:2026年3月13日、31日、4月14日

アドバイザー:戸村朝子
ニューヨークでパフォーマンス作品を実現するためには

アドバイザーの戸村朝子さんとの面談では、プロジェクトを行う際の情報の広め方や、パフォーマンス時の記録を手伝うアシスタントの募り方など、具体的な進め方について議論されました。
花形さんからは、滞在中に予定している3つのプロジェクトについて説明がありました。1つ目が《still human》をクリニックの形でさまざまな場所で実施するもの。2つ目が、目の位置を移植する装置を付けた花形さん自身が、階段やエレベーターといった場所を徘徊するように数時間かけて継続的にパフォーマンスを行うもの。3つ目がレクチャーやデモなどの一般的な形式での発表です。
これに対して戸村さんからは、例えば2つ目のパフォーマンスを、クリニックのプロモーションとして位置付けることで、クリニック開催の日時や場所についての情報を広く認知してもらうことができるのではないかというアドバイスがありました。また、花形さんがパフォーマーとなる際の映像記録については、映画芸術やメディア芸術学部のあるNYUのTisch School of the Artsの学生に依頼するなど、映像制作やエンターテインメント分野の中心地であるニューヨークで探すのが良いのではないかという話がありました。
日本から持ち込む機材や印刷物に関して、関税や空港での取り締まりが厳しくなる懸念から、公式な書面を準備したり、現地の調達することも検討した方が良いというアドバイスがありました。

アドバイザー:エキソニモ
身体の感覚をひらくプロジェクトの実践場所

花形さんがニューヨークで展開予定の《still human》は、目の位置を移植する装置であり、これを装着することで身体が変化し、それに合わせて周りの環境がつくり変えられるというもの。その前段として、ニューヨークのさまざまな場所で身体に意識を向ける「問診」を実施し、違和感のある位置に目を付けたうえで、問診を受けた体験者の身体を、鏡などを見ずにスケッチしてもらうことを想定しています。アドバイザーのエキソニモの千房けん輔さんと赤岩やえさんとの面談では、プロジェクトの展開方法について議論されました。
モバイルユニットのような形でコンパクトに実施できるとのことで場所の可能性は広がりますが、ストリートで知らない人に対して行うよりも、アート、ダンス、テクノロジーなどの学生やパフォーマーが集まる場所で実施する方が、より集中して体験に向き合ってもらえるのではないかという意見が出ました。そのため、NYUやNEW INCなどの機関で開催する、アーティストが自身のスタジオを一般に開放するオープンスタジオでスペースを借りるといった案が出されました。
また、デバイスを身体に接続することから、メディアアート分野からも関心を持たれることが想定され、本プログラムのアドバイザーでもあるMITメディアラボのザッカリー・リーバーマンさんや、同じくMITメディアラボのヒュー・ハー教授とコンタクトを取ることも勧められました。
最後に、千房さんと赤岩さんからは、できるだけ場所の制約を受けずに実施できるよう計画することで、可能性が広がるのではないかというアドバイスがありました。

アドバイザー:サロメ・アセガ
身体を作り替えるプロジェクトを発展させるために

アドバイザーのサロメ・アセガさんとの面談では、《still human》のパフォーマンスについて議論がなされ、滞在中にアプローチすべきアーティストが紹介されました。
アセガさんからは、同作について、つま先など体の目以外の部位にカメラを取り付ける理由は何なのか、知覚のあり方が変わることで何が得られるのかという質問がされ、作品についての理解が深められました。観客からは花形さんの見ているものが見えるのかという問いかけもありました。現状では、パフォーマーの視点を見ることができませんが、もし見えるとしたら観客との間に共感が生まれ、パフォーマンス自体も変化するのではないかという議論がなされました。
また、将来的にプロジェクトをどう発展させようとしているのかという質問に対しては、つくり替えられた身体に合わせた道具を開発することで、デジタル技術ではない新しい技術の仕組みを生み出すという構想が共有されました。花形さんが興味を持っているアーティストとして、外骨格などの装置によって人体を変異させる作品を制作している、オーストラリア人のStelarcが挙げられました。
こうした内容を踏まえ、アセガさんからは、ニューヨークで《still human》のデバイスを装着することに興味を持ってくれそうなアーティストとしては、人間とマシンの知覚や情報処理の違いについて探究するマルチメディアアーティストや、モーションキャプチャを多用するパフォーマーが紹介されました。

アドバイザー:イェスル・ソン
身体とテクノロジーの可能性を探求する

アドバイザーのイェスル・ソンさんとの面談では、《Ergonomic Embryo》について話し合われ、そのうえで会場などの候補が提案されました。
花形さんがニューヨーク滞在中に予定している2つのプロジェクトのうちのひとつ《Ergonomic Embryo》は、パフォーマーの身体が画像生成AIによってスクリーン上の椅子のイメージと繋げるというもので、テクノロジーを使うのではなく、テクノロジーに「なる」ことを目指していることが説明されました。ソンさんからは、椅子をモチーフに選んだ理由や、作品名の「Ergonomic Embryo(人間工学的胎芽)」の意味についての質問があり、作品の背後にある花形さんの世界観について深掘りされました。
この作品はパフォーマーである花形さんとスクリーンというシンプルな構成で上演できることから、会場の候補としてレンタル型の小劇場、ダンスなどの身体の動きの研究に特化した施設、演劇やアートとテクノロジーを扱うスタジオ、アートギャラリーなどが挙げられました。花形さんからは、パフォーマンスの冒頭で、観客に対して椅子に座っている自分の身体に意識を向けることを促す場面があることから、観客は座席に座っている必要があることが共有されました。
ソンさんからは、6月に行われるNYUの「ITP Camp」という1ヶ月間のプログラムや、身体の動き関するワークショップなど、繋がりを作る機会に参加することも有効であるというアドバイスがありました。