
渡航前面談レポート#11:nori
デジタルテクノロジーを駆使した新しいアートのためのオンラインプラットフォーム「NEORT」、および東京・馬喰町にあるコンピュータアートギャラリー「NEORT++」にてディレクションやコネクターを務めるnoriさん。近年はクリプト領域にも参入し、Crypto Art Week AsiaやCrypto Art Fesなど国際的なイベントの国内開催にも尽力しています。2026年11月からの約1ヶ月間を予定しているニューヨーク滞在では、フルクサスやE.A.T.などアートとテクノロジーの歴史を調査するとともに、デジタルアートを軸に東京とニューヨークをつなぐ活動をさらに発展させたいと考えています。
面談実施日:2026年7月14日、15日

アドバイザー:エキソニモ
過去と現在を知り、つなぐ
歴史を現代へと紐づける
「ジョージ・マチューナスによるフルクサスの活動は、日常を巻き込むパフォーマティブな芸術。インターネット時代である現代においても参照すべき表現」とnoriさん。今回の滞在の目的の一つは、歴史を現代へと紐づけることだと言います。1960年代に生まれた、通信・研究開発機関であるベル研究所と、アーティストとエンジニアや科学者の協働を目的とした非営利組織E.A.T.の関係や、現在における量子・フィジカルAIなどの研究にも注目しながら、「アーティストやコレクター、支援者とのネットワーキングに加え、Google DeepMindやAnthropicなどのR&D拠点なども訪問できたら」と話します。さらに、渋谷区との連携なども視野に入れながら、デジタルアートを軸にニューヨークのパブリックアートをめぐる規制や都市間連携についてもリサーチする予定です。
今のNYを知る
エキソニモの赤岩やえさんと千房けん輔さんからは、リサーチ先の候補として、久保田成子ヴィデオ・アート財団やロバート・ラウシェンバーグ財団など、アートとテクノロジーの歴史を知るうえで重要な資料・コレクションを持つ組織へのコンタクトが勧められました。「久保田成子とナムジュン・パイクが使っていたスタジオが公開されていて、事前に申し込めば見られるはず。当時の様子が感じられるし、外にはなかなか出ない資料などもまとまっている」と赤岩さん。一方で、Onassis FoundationやMana Contemporary、新設予定のCANYONなど、現在進行形の活動や施設へのアプローチも有効と話します。千房さんからは「ブルックリンでは、若い世代による実験的で草の根的なイベントが活発。そういったコミュニティにも積極的に足を運ぶといい」と、規模を問わず幅広く現在の動向を知ることの重要性が示唆されました。
ニューヨーカーの会話はピンポン
「アポイントを取る際には、相手にとってのメリットを提示することが大事だが、noriさんの場合は東京にギャラリーを持っていることもあり、提示しやすいのでは」と千房さん。noriさんも「相手にとっての僕に会うメリット、『いい理由』をそろそろ考え始めないと、と思っている」と同意しました。「noriさんは英語が堪能だから、その分スピーディな会話のラリーに入らざるを得ないので、そこは大変かも。こちらは会話のキャッチボールではなくピンポン。すぐに打ち返さないといけない」と赤岩さん。noriさんは「会話もファイトの場という、ニューヨーカーのバイブスは心得ている。友好的にぶっ飛ばしていきたい」と気合を見せました。
アドバイザー:戸村朝子
東京の現場とニューヨークの組織との架け橋に
アーティスト支援とマーケティング
面談の冒頭、アドバイザーの戸村朝子さんから「noriさんの活動について、改めてその動機と背景を聞きたい」とのリクエストがありました。noriさんはこれまでを振り返り、レッドブルやハーマンミラーでの会社員経験を経て、デジタルアートの可能性に着目し、現在の活動に至った経歴を紹介。大学時代から音楽やアーティストの支援に関わり、レッドブルでは営業とマーケティングの両面から音楽・フェス文化に携わるなど、異なる領域で培った経験が現在の活動につながっていると話します。noriさんのキャリアや、その中で感じたグローバルな活動におけるローカライズの重要性について、「自身の経験歴とも重なる部分がある」と戸村さんは共感を示します。また、noriさんがディレクターを務めるNEORTの少人数運営にも賛同。価値観を共有しました。
企業によるアーティスト支援をリサーチ
noriさんが構想しているのは、ジャパン・ソサエティや国際交流基金など、非営利団体と連携し助成金を獲得しながら、日米の文化交流を支える仕組みをつくることです。「たとえばメディアアートの作家の作品アーカイブなど、アーティストの活動を記録・保存し、その文化的価値を高める取り組みも検討中」とnoriさん。Bloombergなどアジアとの接点を持つ企業や、Microsoft Research、Googleなどテック企業のアート領域への関与にも注目しており、ニューヨーク滞在中にリサーチするとともにネットワーク構築の手がかりを得たいと話します。戸村さんは「企業の支援の背後には事業上のリターン、フィランソロピーやロビー活動などの性質の異なる動機がある。関係の形成には背景と各団体の動機を見極めながら、変化を継続的に観察することが重要」とコメントしました。
東京を実証実験の場に
また、noriさんは、東京をニューヨークとは異なる実証実験の場として捉えることに可能性を感じていると言います。「テクノロジーに強いアーティストにとって、東京は比較的低コストで作品を試せる環境。日本で実績を積み、海外へ展開するというモデルには可能性がある」とnoriさん。戸村さんは「東京での活動が、米国企業や団体にどのような価値をもたらすのかを明確に示すことが重要」と返します。noriさんが渋谷区と進めるDig Shibuyaでは、公共空間の活用に必要な規制や申請手続きを「クリエイティブプレイブック」として整理し、表現活動を後押ししていると言います。「こうした都市とクリエイターをつなぐ仕組みを、ニューヨークにも応用できるのでは」とnoriさん。過去と現在、そして東京とニューヨークの架け橋になるために有効なアクションとは? 密度の高い議論が交わされました。




