渡航前面談レポート#10:小宮りさ麻吏奈

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CG-ARTS(公益財団法人画像情報教育振興協会)

バイオテクノロジーや生殖についてのリサーチをベースとして、クィアなナラティブをテーマにさまざまなメディアを横断し制作を行う小宮りさ麻吏奈さん。ニューヨークではバイオアートの施設リサーチやクィア・エコロジーの実践者とのネットワーク構築をメインに活動する予定ですが、展示や制作も模索中のようです。アプローチすべき施設やコミュニティについて、また制作環境などについてアドバイザーにヒアリングしました。

面談実施日:2026年7月10日、13日

アドバイザー:エキソニモ
早めのリサーチとアプローチで充実した滞在に

キーパーソンは国内にも
メインの話題は、小宮さんの関心領域に重なる個人や専門機関、コミュニティのヒアリングになりました。バイオアートの専門家や専門機関、クィアやエコロジー的実践にまつわるコミュニティに日本のマンガを扱うショップ、また日系アメリカ人アーティストが集うコミュニティまで、エキソニモの千房けん輔さんと赤岩やえさんからはさまざまな候補が挙がりましたが、バイオアートやクィアの入り口としては、本プログラムのアドバイザーの一人である塩野入弥生さんや、バイオアートを専門とする福原志保さんなど日本でアプローチ可能な人物の名前も。「一人つながれば、そこから芋づる式に広がる可能性は高い」と赤岩さん。千房さんはNEW INCに在籍する約100名によるメンター制度を紹介。「渡航前にリサーチをして、関心領域が合う相手を見つけて面談を申し込んでおくといい」と、早めのアプローチを勧めました。

バイオアートはニューヨークでは下火?
「今、バイオアートはニューヨークではあまり盛り上がっていないという話も聞いたが」と小宮さん。以前、NEW INCのディレクターであり本プログラムのアドバイザーの一人でもあるサロメ・アセガ氏から聞いた話だと言いますが、エキソニモの二人に現地の肌感を尋ねました。「確かに、15年くらい前に大きなブームのようなものがあったが、今は落ち着いているのかもしれない」と千房さん。今の盛り上がりとしてはやはりAIだと言います。一方で「私がいいなと思うのは、ニューヨークではブームが終わってもそれを本当に面白がっている人たちのコミュニティは残ること」と赤岩さん。活動歴の長いバイオアートのコミュニティにつながることができれば、実りある滞在になりそうです。

現地での制作環境と展示
滞在の最終週には発表の場が用意されているものの、どの程度展示を重視すべきか図りかねている様子の小宮さん。バイオ系はサブスク制で使用可能なラボをいくつか見つけたと言いますが、そのほか、現地の制作環境について質問がありました。「家一軒建てられそうな充実したホームセンターはあるが、電子パーツは全部オンライン。制作場所や電子工作機械などはNEW INCが使える」と千房さん。
展示について、赤岩さんは「あらかじめ用意された場所で展示するよりも、現地で場所を見つけて展開するようなやり方を面白がるアーティストな気がする」と、小宮さんのこれまでの活動から感じられるオルタナティブな印象に期待を寄せつつ、「短い滞在期間の中で展示をするのは一長一短。どうしてもリソースが割かれるし、展示が効果的かどうかはアーティストのパーソナリティにもよる」と、これまでの事例を紹介しました。展示にこだわらずとも、zine制作など具体的な目的を持って活動することが重要なようです。

アドバイザー:戸村朝子
テーマを持ちながら広く吸収

ニューヨークで会うべき人
小宮さんの活動紹介を受け、戸村朝子さんは「やはり骨太。マルチにベクトルが向いているので、どこで何が発火するかわからない。リサーチのテーマは持ちながらも、他のものもどんどん吸収してきてほしい」とコメントしました。滞在中、バイオアート関連の施設や人を訪問予定の小宮さんですが、小宮さん自身がつながりを持っているのは、コールド・スプリング・ハーバー研究所のみのため、機関や人を紹介してほしいと言います。戸村さんからは、パーソンズ美術大学の教員で、藻を使ったインスタレーションを手がけるパーソンズ美術大学の教員、ハルプリート・サリーン氏や、ハブになってくれそうな人物としてMITメディアラボのザッカリー・リーバーマン氏らの名前が挙がりました。加えて執筆した漫画の文脈では日系アメリカ人のコミュニティにもつながれたらという小宮さんに、「ニューヨークにこだわらないならロサンゼルスなど西海岸の方に遠征してもいいかもしれない」というアドバイスがありました。

バイオアートの動向
戸村さんはバイオアートを取り巻く状況について、「バイオアートは比較的参入しやすく、バイオテクノロジーを使っているというだけで評価された時期もあるが、社会が追いついてきて、今や生殖や食、医療など、総じて身近なものになった」と話し、コンテクストを踏まえ、今何を打ち出すかが重要と言います。小宮さんも「バイオテクノロジーにフォーカスしていなくても、手段の一つとして取り入れる作家も増えてきている。コンセプトベースでどういう研究者とつながれるかが重要。どのような専門領域の人たちが、バイオアート周辺でどのように協働しているのかが見られるといい」と話しました。

日本と異なるクィアのコミュニティ
加えて、クィアやエコロジーにまつわる実践の文脈でも現地の動向を知りたいと言います。「本プログラムに応募したきっかけは、2年ほど前、NEW INCのサロメ氏と話したこと」と小宮さん。「NEW INCにはクィアを扱うアーティストやバックグラウンドを持つ人が常に一定数いると聞き、日本と違い、クィアのコミュニティがアートの中にもしっかりと根付いているのだと知り興味を持った。そんなニューヨークのコミュニティに出会い、どんな実践があるのか知りたい」と言います。
戸村さんは「小宮さんが活動の中で構築してきているコンテキストはどれも頷くものばかりだが、ニューヨークという資本主義の根源のような場所で、いい意味での打ち返しがあると思う。より研ぎ澄まされて、さらに奥まで追求できる解像度が得られるのでは」と話し、小宮さんのニューヨーク滞在に期待を込めました。