
渡航前面談レポート#3:宇佐美奈緒
映像、ビデオゲーム、パフォーマンスを 3DCG 技術を⽤いて制作する宇佐美奈緒さん。ニューヨークへの渡航は2026年2月を予定していますが、準備を進めるにあたって2025年7月に、オンラインでアドバイザーたちとの面談を行いました。滞在期間には、各種リサーチとともにトークイベントの開催も目標にしています。リサーチのポイントや、現地アドバイザーとの協力体制など、複数日にわたって行われた面談の概要をまとめます。
面談実施日:2025年7月8日、16日、17日、31日

アドバイザー:戸村朝子
幅広い視点を取り入れることで、表現の解像度を高める
アドバイザーの戸村朝子さんとの面談では、まず宇佐美さんから、活動の軸がフェミニズム研究、ジェンダー研究、メディアアート、ゲームにまたがっている点が特徴であることが共有されました。
それを受けて戸村さんから参照できるプロジェクトとして、東京大学とソニーグループが進める「越境的未来共創社会連携講座」や取組みの成果展である「TECH BIAS」展が紹介されます。講座担当のひとりであり、ジェンダーとフェミニズムの視点からメディア、テクノロジーと社会、文化の関わりを研究する田中東子教授や、同じく講座担当者であり、性差から発生する不条理といったテーマを扱うことの多いアーティストの長谷川愛さんの活動は、宇佐美さんの関心に近いのではないかと助言がありました。
ニューヨーク滞在中は、ミンディ・セウ、レガシー・ラッセルなど、サイバーフェミニズムを研究するアーティストと交流しながら、日本のフェミニズム的実践を紹介したいという宇佐美さん。戸村さんからは、宇佐美さんの関心分野の研究者からも話を聞くことで視野をさらに広げ、自身のリサーチを理論的に補強できるのではないかと指摘がありました。宇佐美さんはこれに共感し、アーティストだけでなく研究者にも質問を広げることで自身のテーマを客観化し、自身の表現のさらなる展開に繋げたい旨を共有しました。
アドバイザー:エキソニモ
チラシやSNSの活用で、人に発信するメディアをつくる
エキソニモの千房けん輔さんとの面談では、宇佐美さんがニューヨーク滞在中に行うリサーチや展示計画について話し合われました。
宇佐美さんは現代美術、メディアアート、映画の3分野を横断的に活動しており、ニューヨーク滞在中はMoMA、ニュー・ミュージアムといった主要美術館のほか、フェミニストアート、LGBTQIA+アート、移民アートに関連する機関、そしてストロング国立遊戯博物館、ワンダーヴィル、ニューヨーク大学ゲーム・センターなどのゲーム関連機関などを訪問し、現地のアーティストや研究者とのネットワークを構築したいと述べました。千房さんからは美術館とのコンタクトの取り方や、各施設の活動状況などについて助言がありました。
こうした活動に加え、滞在中には映像作品を展示、トークイベントと合わせて発表し、街中でのパフォーマンスも構想していることを説明しました。これに対し千房さんは、展示をする際は事前にチラシやSNSを活用して積極的に人を招く重要性を強調。Instagramを名刺代わりのポートフォリオとして整えることも提案しました。
会話の終盤ではメディアアートの販売・資金調達の現状についても議論があり、千房さんはアメリカでは個人コレクター主導で作品が購入されること、NFTの登場以降デジタルアートが徐々に受容されつつあることを説明。宇佐美さんはこれを踏まえ、現地の状況を実際に見ることで多くを学びたい旨を述べました。
アドバイザー:イェスル・ソン、サロメ・アセガ
フェミニズム、クィア、LGBTQIA+、移民の視点とニューヨークのアートシーン
イェスル・ソンさんとサロメ・アセガさんとの合同面談では、宇佐美さんが、フェミニズム、クィア、LGBTQIA+、移民をテーマとするアートのコミュニティを軸に、ニューヨーク滞在中のリサーチ計画を共有しました。
宇佐美さんは、フェミニストアートの展示に力を入れるブルックリン美術館、世界で唯一のLGBTQIA+美術館であるレスリー・ローマン美術館、またアーティストブックやパフォーマンスアートのアーカイブに注力するフランクリン・ファーネス、レガシー・ラッセルがエグゼクティブディレクターを務めるザ・キッチンなどへの訪問を予定しており、デジタルアートやゲームアート、映画など自身の実践とも関連づけたいと語りました。
宇佐美さんはニューヨーク滞在中にAIを用いたディープフェイクポルノやSNS上のデジタルタトゥーを扱った自身の映像作品を展示、トークイベントの開催を構想しており、アセガさんをモデレーターに迎えたい旨を説明しました。また、デジタルアートやフェミニスト、クィアアートの市場の現状についてもアーティストなどに質問したいことも共有しました。
アセガさんは、クィアアーティストのためのレジデンシープログラムであるBOFFOや、ニューヨーク歴史博物館に新設されたアメリカンLGBTQ博物館を紹介。BOFFOは夏季のプログラムながら、クィア・アーティストが集う拠点として訪問を勧めました。さらに、ニューヨークで長く活動する団体のQueer Artを挙げ、メンター制度や助成金など実践的支援の場として有用であると助言しました。
ソンさんは、近年の米国がフェミニズムやLGBTQIA+のコミュニティにとって政治的に難しい状況であることに言及。また、フェミニズムやクィアの身体を主題にしたプロジェクト「How It Slips」や、マンハッタンの14丁目通りを活用したアーティスト主導のフェスティバル「Art in Odd Places」を紹介し、ギャラリーなどの展示空間に限らず、公共の場やInstagramなどオンラインのツールを使った表現方法の調査も提案されました。
またアセガさんからは、毎晩タイムズスクエアの全スクリーンをアーティスト作品で覆うプログラム「Midnight Moment」を例に、デジタルアートの新しい発表形態に触れる重要性が提案されました。
宇佐美さんは、多くの具体的な機関や人物が紹介されたことに感謝を述べつつ、社会的・文化的文脈の中で活動するアーティストや研究者との対話を通じて、より広いネットワークを築く意欲を示しました。







